Director's Diary 名大高等研究院の日々

名古屋大学高等研究院の活動の一端をご紹介します。

安心して子育てができる大学を目指して

 12月11日の午後には、ジェンダー・リサーチ・ライブラリの会議室で、男女共同参画センター長の束村博子先生(名古屋大学副理事・生命農学研究科教授)とお話をさせていただきました。いったい、高等研究院と男女共同参画センターのどこに接点があるのかと、不審に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが・・・。

 

 現在、名古屋大学の高等研究院は、以下の4点を活動の基本としています。

1. 名古屋大学の優れた研究の認知と発信

2. 先端的な研究の支援と研究力の向上

3. 学際的な立場からの若手研究者の育成支援

4. UBIAS基幹大学としての国際研究ネットワークの強化

 

 この中でも、現在、世界の有力な高等研究院が競って力を入れているのが、3の学際的な立場からの若手研究者の組織的な育成支援であり、名古屋大学では、高等研究院のYLCプログラムが、そのための中心的な柱として位置づけられています。大学の活力を維持・発展させるためには、世界中から多様で優れた若手研究者を集めていかなくてはなりませんが、そのためには、何よりも若手研究者にとって理想的な研究生活環境を大学の中に整備することが、必要不可欠となります。その際、20代の末から30代の研究者にとって、「安心して子育てができる環境」が、何よりも大切であることはいうまでもありません。

 

 名古屋大学には、束村先生をはじめとする先生方の粘り強いご尽力によって、既に「こすもす保育園」という学内保育園が設置されており、私も命名者としてこの保育園の存在には、とても誇りを感じています。しかし、保育の需要の増大により、若手研究者支援という視点からは、これだけでは十分に育児のニーズに応じ切れなくなってきていることも事実です。高等研究院としては、とりわけ男女共同参画センターと連携することにより、幅広い視点からこの問題に取り組んでいきたいと考えています。

 

南京大学訪問

 12月1日から4日にかけて、南京大学の高等研究院を表敬訪問してきました。中国は初めてだったのですが、客員准教授の蔡大鵬先生(元高等研究院専任教員)が同行してくださったおかげで、滞りなく日程をこなすことができました。蔡先生、ありがとうございました。

 

 今回は、関空まで移動してから、中国東方航空の直行便で、一路南京へ。空港から街までの高速道路が、すっかり霧に包まれているので、尋ねると大気汚染のためとのこと。翌朝、泊まっていたホテルの窓から外を見たら、こんな感じでした(もともと、天気も良くなかったのですが・・・)。

 

f:id:kleisthenes:20181224162843j:plain

 

 こちらは、大学を訪問する前に市内を案内してくださった、南京大学高等研究院の副院長のCon(ツォン)先生とのスナップ。後ろは、鶏鳴寺です。Con先生とは、昨年、名大で行われた院長会議の際にお目にかかったことがあるだけでしたが、今回の訪問では、大変にお世話になりました。先生は英文学がご専門で、とてもきれいなイギリス英語を話されます。90過ぎのお父様が北京にいらっしゃるそうですが(ご専門は聞きそびれました)、昨年だけでも4冊の本を出版されたとのことで、そのお父様から「おまえは怠け者だ」と怒られたと苦笑いをされていました。

 

f:id:kleisthenes:20181224163154j:plain

 

 街中には、至る所にこのようなスローガン(?)が掲げられていて、とても印象的でした。

 

f:id:kleisthenes:20181224164039j:plain

 

 さて、こちらが、街中にある南京大学の正門です。ただし、現在、キャンパスは26km離れた新しいところに移転中とのこと。

 

f:id:kleisthenes:20181224164249j:plain

 

 こちらが、南京大学のシンボルになっている印象的な建物です。

 

f:id:kleisthenes:20181224164451j:plain

 

 キャンパスを歩いているときに、Con先生が盛んに、かつてノーベル文学賞を受賞された南京大学の英文学の先生の話をされていて、誰のことかさっぱり分からなかったのですが(そもそも、中国については知識が皆無に等しいのですが)、その方の銅像の前に来て、謎が氷解しました! そう、パール・バックです。中国名で言われても、分からない訳ですね。帰国後、慌ててアマゾンで『大地』の全訳を購入して再読したのは、言うまでもありません。

 

f:id:kleisthenes:20181224165259j:plain

 

 高等研究院では、院長のZhou先生と初めてお目にかかり、China Network(南京大学の呼びかけで結成された、中国のトップクラスの研究大学の高等研究院によるコンソーシアム)のことなど、たくさんの興味深いお話をうかがうことができました。ちなみに、Zhou先生のZhouは、漢字では「周」。名字が一緒だねと、盛り上がりました。

 

f:id:kleisthenes:20181224170023j:plain

 

 同じ東アジアを代表するUBIASのメンバー校として、これからもよろしくお願いいたします。こちらは、淮河の夜景です。

 

f:id:kleisthenes:20181224170424j:plain



 

名古屋大学レクチャー2018開催

 11月23日には、豊田講堂で2018年度の名古屋大学レクチャーを開催しました。名古屋大学レクチャーとは、高等研究院が開催の実務を担当する名古屋大学のもっとも重要な学術講演会です。毎年、講師には世界トップレヴェルの研究者が招へいされ、名古屋大学の総長からレクチャーシップが授与されます。今年は、2015年度にノーベル賞を受賞された梶田隆章先生に、講師としてご登壇いただきました。ご講演に先立って、杉山直先生(理学研究科長・元高等研究院副院長)による分かりやすい解説講演もあり、多くの方にお楽しみいただくことができたのではないかと思います。ご講演は、カミオカンデスーパーカミオカンデで苦闘されたご経験を交えた、素粒子研究への情熱あふれる素晴らしい内容でした。

 

f:id:kleisthenes:20181224155627j:plain

 

 こちらは、レクチャーシップの盾を手にする梶田先生(右)と、松尾清一総長です。

 

f:id:kleisthenes:20181224155818j:plain

 

 この日は、素晴らしい秋晴れに恵まれ、たくさんの方にご参会いただくことができました。実務担当責任者として、ご来聴いただいた会場の皆様に厚く御礼申し上げます。

 

f:id:kleisthenes:20181224160931j:plain

 

ビーレフェルト大学訪問(2)

 今回、ZiFでは、50周年の式典の前日に、UBIASのSteering Committeeが行われました。UBIASとは、University-Based Institutes for Advanced Studyの略称で、大学附属の高等研究院による国際的なコンソーシアムのことです。これには、日本からも早稲田大学と名大が加盟していますが、名大は九つの基幹大学の一つとして、このコンソーシアムの運営に積極的に関わってきています。こちらが、今回のSteering Committeeの会場。振り返っているのが、現在ZiFの所長を務めている、ヴェロニク・ザネッティさんです。会議には、フランス高等研究院連合のオリヴィエ・ブアンさんのように、ビーレフェルトに来れなかった人も、スカイプで参加しました。

 

f:id:kleisthenes:20181221171415j:plain

 

 翌日には、ZiFの中のオーディトリアムで、50周年の式典が行われました。ゲストの音楽家(デトモルト音楽院で教えている日本人のマリンバとピアノの方)の演奏を間に挟みながら講演が行われるというスタイルで、終了後にはホワイエで盛大なパーティーも開かれました。こちらは、準備中のホワイエの様子。赤い服を着ているのが、ブリッタです。

 

f:id:kleisthenes:20181221172506j:plain

 

 式典で、UBIASからの記念品を贈呈する、チェアのアリ・プロンスキさん(サンパウロ大学)。

 

f:id:kleisthenes:20181221172622j:plain

 

 ZiFのさらなる発展を祈念しています。

 

f:id:kleisthenes:20181221173458j:plain

 

ビーレフェルト大学訪問(1)

 11月14日から19日まで、ドイツのビーレフェルト大学の高等研究院、ZiF(Zentrum für interdisziplinäre Forschung、直訳すれば「学際研究センター」)を訪問してきました。ビーレフェルトといっても、パッと頭にその位置が思い浮かぶ方は少ないかと思いますが、ドイツの北西部、エッセンとハノーファーの中間くらいにある中規模の都市で、すぐ近くには音楽院で有名なデトモルトがあります。こちらが、旧市街の城塞の上から望むビーレフェルトの市街。煙突が、ちょっと邪魔ですね。ちなみに、今回はフィン・エアで名古屋からヘルシンキ経由でデュッセルドルフに飛び、特急でビーレフェルトまで行って、帰りは特急で逆方向のベルリンに出て、そこから帰国しました。

 

f:id:kleisthenes:20181221094158j:plain

 

 大学は、街の中心から少し離れた郊外(地下鉄が通じています)にあります。キャンパスには、ドイツの伝統的な大学のイメージを裏切る巨大な建物が連なっていて、これはなかなかの迫力です。すべての学部の建物が一つに結びつけられていますが、これも学際研究の拠点を標榜するこの大学のヴィジョンを体現しているのだそうです。ちなみに、今回は、ずっと快晴だったのですが、かつてここに留学していた同僚によると、こんな天気はとても珍しいとのこと。

 

f:id:kleisthenes:20181221093507j:plain

 

 大学附属の高等研究院は、どこも比較的歴史が浅いのですが、ZiFは1968年、つまりビーレフェルト大学が創設される1年前(!)に誕生しました。ここの特徴は、個人ではなく外部の研究グループに滞在の機会を提供して、ビーレフェルトの研究者と交流しながら、一定期間、討論と研究に専念してもらうという点にあります。

 

f:id:kleisthenes:20181221174004j:plain

 

 こちらが、そのZiFの建物です。後ろには、トイトブルクの森が広がっています。紅葉が、見事でした。

 

f:id:kleisthenes:20181221165223j:plain

 

 到着すると、昨年の名大での院長会議にも来てくれたマネージング・ディレクターのブリッタが、誇らしげに中を案内してくれました。こちらは、宿舎の内部。家族で滞在できるようにいろいろ工夫されていて(なんと、広い室内温水プールまであって、ちょうどフェローの子どもたちがバチャバチャ泳いでいました)、ちょっと羨ましかったです。確かに、こんなソファに座って静かにワインの杯を傾けていれば、新しいアイディアも豊かに沸いてくるというものでしょうね。

 

f:id:kleisthenes:20181221165632j:plain

 

ご挨拶

f:id:kleisthenes:20181217112432j:plain

 

 名古屋大学東山キャンパスの外れにそびえる、高等総合研究館。といっても、名古屋大学の学生、教職員の大半は、その存在を知らないことと思いますが・・・。その1階にある高等研究院の院長室で執務するようになって、半年あまりが過ぎました。このブログでは、名古屋大学高等研究院の活動紹介もかねて、院長室での日々の随想を綴っていきたいと思います。